ひき逃げ(弁護士コラム)
ひき逃げに強い刑事事件の弁護士が、ひき逃げのよくある質問にお答えします。ひき逃げ事件のことでお悩みなら、弊所の刑事弁護士にご相談ください。名古屋など全国の都市でお待ちしております。
ひき逃げの弁護士コラム
ひき逃げは何罪で処罰されるか?
ひき逃げをした場合、何罪で処罰されるでしょうか。
ひき逃げは、道路交通法違反で処罰される。
交通事故を起こした場合、道路交通法上の義務として、救護や通報といった措置をとる必要があります。ひき逃げの場合、これらの措置をとらなかったことになるので、道路交通法違反の処罰を受けます。
ひき逃げは、自動車運転死傷行為処罰法でも処罰される。
交通事故を起こして、相手をケガさせたり死亡させたりした場合には、平成26年の自動車運転死傷行為処罰法の施行以後に行なわれた行為については、過失運転致死傷罪または危険運転致死傷罪によって処罰されます。他方、自動車運転死傷行為等処罰法の施行以前に行なわれた行為については、刑法の自動車運転過失致死傷罪または危険運転致死傷罪によって処罰されます。
ひき逃げの刑罰は?量刑相場は?
ひき逃げをした場合、どのような刑罰が科されるでしょうか。
交通事故を起こした場合
自動車の運転によって人を死傷させた行為について、過失の場合は過失運転致死傷罪として、7年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。これに対して、故意の場合は危険運転致死傷罪として、20年以下の懲役刑に処せられます。なお、過失運転致死傷罪と危険運転致死傷罪とのどちらも、平成26年の法改正により、自動車運転死傷行為等処罰法という法律が根拠規定となりました。
ひき逃げをした場合
交通事故を起こしたにもかかわらず、救護や警察への報告といった措置を講じなかった場合には、救護をしなかった点については10年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。他方、警察への報告をしなかった点については3か月以下の懲役または5万円以下の罰金に処せられます。
以上が法定刑ですが、では、具体的な量刑は、どのようになるでしょうか。
ひき逃げで被害者にケガを負わせた場合
救護義務を果たしたひき逃げのない交通事故の場合、被害者のケガの程度に応じて、量刑が決まります。ケガの程度が軽ければ、10万円〜数十万円程度の罰金刑で済むことが多いです。ケガの程度が重く、被害者に重大な後遺障害が残ったような場合は、禁錮1年前後・執行猶予3〜4年となることが多いです。これに対して、ひき逃げのケースでは、略式罰金で終わるケースは珍しいです。正式裁判となって、懲役刑が言い渡されるのが通常です。ケガの程度が重ければ、初犯でも執行猶予が付かず、懲役実刑になる可能性があります。
ひき逃げで被害者を死亡させた場合
ひき逃げで被害者を死亡させた場合は、正式裁判となり、懲役実刑が言い渡される可能性が極めて高いです。ひき逃げのケースでは、被害者遺族から示談や宥恕を得ることも難しく、対人無制限の自動車保険に加入していたとしても、行為の悪質性と結果の重大性から、懲役実刑になることが見込まれます。
ひき逃げと当て逃げの違いは?
交通事故を起こした後で現場から逃げ出す行為には、ひき逃げのほかに、当て逃げという類型もあります。
ひき逃げと当て逃げ、どちらも厳密な定義はありませんが、一般的な理解としては、どのようなものでしょうか。
ひき逃げとは?
一般にひき逃げとは、自動車で人をはねるなど人を死傷させる交通事故を起こしたにもかかわらず、救護や警察への報告などの措置を行なわなかった場合をいうと理解されています。
当て逃げとは?
当て逃げとは、自動車を物に衝突させるなど物を損壊する事故を起こしたにもかかわらず、警察への報告などの措置を行なわなかった場合をいうと理解されています。
このように、ひき逃げと当て逃げとは、交通事故の後で救護や警察への報告と言った措置を行なわない点では共通します。両者の違いは、起こした交通事故が物損のみ(当て逃げ)か、それとも人の死傷まで生じさせるか、という点にあります。
ひき逃げでも保険の適用はある?別に示談金を払う必要はある?
ひき逃げ事件にも、保険は適用されるでしょうか。
ひき逃げでも保険は適用される
ひき逃げ事件は、ケガが発生しているので、人身事故となります。人身事故の場合、自賠責保険がまず適用されます。自賠責は、通常は加害者側で保険金の支払いを請求しますが、あなた(被害者)側で保険金支払いを請求することもできます。
自賠責保険には限界がある
自賠責は保険金の額に限度があります。死亡事故なら3000万円、後遺障害が生じた場合は、等級に応じて120万円から4000万円の範囲が限度となります。これを超える部分については、加害者側かあなた側の任意保険に寄る必要があります。
なお、ひき逃げの示談金の相場があるかについては、あなたに生じた慰謝料や保険での不足額などにもよるので、一般的な相場というものはなく、ケースバイケースです。
当たったことに気づかない場合でもひき逃げになる?
ひき逃げ、すなわち人を死傷させる交通事故を起こしたにもかかわらず救護や警察への報告といった措置をしなかったことによる道路交通法違反は、故意犯です。そのため、前提として、人を死傷させる交通事故があったことを認識していることが、犯罪成立の条件とされているのです。
交通事故に気付かなかった場合
人を死傷させる交通事故があったことに気づかない場合やわからない場合には、ひき逃げは犯罪とはなりません(ただし、救護や報告をしなかったことが犯罪とならないにしても、交通事故で人を死傷させた点については、過失運転致死傷罪に問われます)。
ウソはかえって逆効果
上記の解説をみると、「『交通事故を起こしたことに気づかなかった』とウソを言った方が有利ではないか」と思う向きがあるかもしれません。しかし、交通事故に気づかなかったと嘘の弁解をしても、当時の周囲の状況からして不合理であるときは、嘘であることがばれてしまいます。そうなった場合、反省の情なしとして、ひき逃げにして重い量刑が科されることになるでしょう。
よくあるひき逃げの弁護士相談
運転中に歩行者に接触したことに気付かず、運転を続けていました。先日警察から連絡があり、歩行者がよろめいて倒れたそうで、道路交通法のひき逃げの構成要件にあたると言われました。しばらく前のことになるので、自動車運転死傷行為処罰法でなく刑法で処罰されるそうです。私はこれからどうしたらいいですか?
ここで質問ですが、道路交通法の構成要件にあたるのに、なぜ道路交通法ではなく刑法で処罰されるのか不思議ですので、教えてください。また自動車運転死傷行為処罰法は最近できた法律だと思いますが、どのような内容なのでしょうか?
自転車の人とぶつかって、怖くてその場を逃げ、ひき逃げをしてしまいました。相手の人が軽症か重症か、死亡したのかわかりません。法改正で法定刑・量刑が重くなったと聞いています。私の刑罰の相場は、判例ではどのくらいでしょうか?
相手が軽傷か重症または死亡したのかで刑罰の相場も変わってくるのは分かるのですが、
法改正もあり法定刑・量刑ともによく分からなくなっていますので判例も含めて詳しく
説明してもらいたいです。
仕事で自動車を運転中に、自転車で走行している人の横を通った際、ミラーに何かにぶつかった感じがありました。カゴに当たっただけと思い、特に確認しなかったのですが、もし人だったらと思うと心配でたまりません。ひき逃げと当て逃げの違いはなんですか?
ひき逃げと当て逃げとの違いはひき逃げのほうが被害者に重大な損害を及ぼしているイメージですが、あとはよく分かりませんので、教えてほしいです。
ひき逃げ事件を起こして、相手にケガをさせてしまいました。被害者に謝って示談してほしいと思っています。相手の治療費等を払うのに、加入している保険は適用されますか?また、示談金の相場はどのくらいでしょうか?
被害者と示談する場合の示談金の額は、弁護士さんの交渉術により、示談金の相場があっても変わることはあるのでしょうか?保険は適用された場合、手続きなどはどのようになるのでしょうか?
ひき逃げ事件を起こした容疑で警察に呼ばれました。私は、本当に人にぶつかったことに気づかず、相手に怪我をさせたとわからない状況だったのですが、警察には嘘を言うなと言われています。どういう条件があれば、言い分を信じてもらえるでしょうか?
警察の取調べでは緊張してうそなんて言える状況ではなかったのに、気づかない・わからないでは許されない雰囲気です、こういう場合は弁護士先生をお呼びしたりするべきでしょうか?