「死亡事故のよくある質問」
Q死亡事故で警察に捕まりました。どんな罪になりますか?
一般的な死亡事故の場合は、過失運転致死罪にあたります。
過失運転致死罪は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(通称・自動車運転死傷処罰法)5条に定められた罪で、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。」と規定されています。
また、特定の条件に該当する悪質な死亡事故の場合には、危険運転致死罪が成立することもあります。危険運転致死罪は、自動車運転死傷処罰法の2条と3条に定められています。
Q家族が死亡事故で逮捕されました。逮捕後の流れを教えてください。
死亡事故で逮捕されると、48時間以内に検察官に送致されます。送致というのは、逮捕された人に関する証拠物や供述調書などの証拠書類が検察官に送られることをいいます。
検察官に送致後24時間以内、かつ逮捕から72時間以内に、検察官が勾留を請求するか否かを判断します。勾留が請求され、裁判官から勾留の決定が下されると、その後まず10日間の留置場生活を強いられることになります。
弁護士がついて対応することで、勾留の判断を行う検察官や裁判官に意見書を提出することができます。弁護士が作成する意見書には、身元引受などの被疑者側に有利な事情が書かれているため、何も行わない場合と比べて、予定よりも早く釈放される可能性が高くなります。
一度勾留されると、起訴/不起訴が決定されるまで、最大で逮捕から23日間の身体拘束を受けます。弁護活動によって勾留の途中で相手方と示談が成立するなどして、途中で釈放されるケースもあります。
勾留されたまま事件が起訴された場合、留置場から出るためには保釈を請求し、許可される必要があります。保釈が許可されれば、200万円前後の保釈金を裁判所に納付し、その日のうちに釈放されます。
保釈後は、保釈の条件に違反しない限り、通常の生活を送ることができます。通勤や通学が可能なので、生活に支障をきたすことはあまりありません。
Q死亡事故でも不起訴になることはありますか?
死亡事故でも不起訴になるケースがあります。事故を起こした側に過失(不注意)が認められないようなケースです。この場合、逮捕されていても、事件は不起訴で終了し、前科がつくことはないので安心です。
弁護士に依頼すれば、事故の態様、具体的には過失の態様を争って、嫌疑不十分に持っていき、不起訴処分を勝ち取るという弁護活動が可能です。
他方で、運転手の過失にもとづく死亡事故の場合は、不起訴になるのは困難です。被害者遺族と示談が成立したとしても、不起訴になることはほとんどありません。稀に、罰金刑で終了するケースがあるくらいです。
Q自動車で人をはねて死亡させてしまった場合、懲役刑になりますか?
死亡事故の有罪判決では、禁錮刑が下されることが多いです。この場合でも、執行猶予がつくケースも多く、執行猶予がつけば直ちには刑務所に行く必要はないので、判決の日はそのまま自宅に帰ることができます。
過失運転致死罪の法定刑は、「7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」と定められています。罰金刑も法定刑に含まれていますが、最近では罰金刑が科されることは滅多にありません。
実際の判決を見てみると、懲役あるいは禁錮の求刑の上で、執行猶予が3~5年つくことが多いです。もっとも、保険未加入で被害賠償が見込まれない場合や、横断歩道上の危険な死亡事故の場合は、初犯でも実刑になるケースがあります。
Q死亡事故で懲役になるとしたら、何年ぐらいになりますか?
事件の危険性や前科の有無によって大きく異なりますが、対人賠償の保険に加入している典型的な過失運転致死罪の場合は、概ね禁錮1~2年の執行猶予3~5年といったところが相場になります。
Q死亡事故で入ることになる刑務所はどのような場所ですか?
いわゆる「交通刑務所」に入ることになります。交通刑務所とは、交通事故や道交法違反などを犯して実刑判決を受けた交通事犯の受刑者を収容するための、専門の刑務所のことです。
現在は、千葉県市原市の市原刑務所と兵庫県加古川市の加古川刑務所の2か所が交通刑務所となっています。
交通刑務所では、普通に働いている人が事故を起こして収容されることが多く、比較的犯罪傾向が進んでいないとされる人が収容されるため、収容者の自由度が高い開放的処遇という方式が取られています。
一般的な刑務所と比べて、規則が緩く、交通刑務所内での生活は受刑者の自主的・自律的生活に任せられている部分が多いです。
また、交通刑務所では、一般の刑務所と同じような刑務作業を行いますが、それと並行して、教習所で見るような映像を見るなどして交通安全に関する指導・教育が強化されています。
Q死亡事故を起こしてしまいました。私の運転免許はこの後どうなりますか?
死亡事故を起こした場合は、基本的に20点の違反点数となります。そのため、原則として一発で免許取消し処分を受けることになります。
死亡事故が自分の不注意によるものではない等の言い分がある場合は、告知と聴聞の機会で意見を述べることで、免許取消しにならないケースがあります。弁護士に依頼すれば、法律的な観点から事故を分析し、告知と聴聞の場に一緒に出席し、ご依頼者に有利な意見を述べることができます。
また、免許取消処分を受けた場合には、行政訴訟として免許取消処分の無効を裁判で訴える方法があります。
Q被害者遺族の方と示談したいです。どのような点に注意すればいいですか?
死亡事故の示談では、ご遺族の気持ちに配慮し、ご遺族の感情を逆なでしないように気をつける必要があります。この点、弁護士を代理人として選任すれば、その後の示談交渉がスムーズです。ご自身で交渉する場合と比べて、弁護士が間に入って話し合った方が、遺族側としても心落ち着くことが多いからです。