「窃盗、万引き事件のよくある質問」
Q本屋で本を万引きしてしまったのですが、どのような刑罰を受けますか?
万引きは、窃盗罪という犯罪です。
窃盗罪は、刑法235条で「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と規定されています。したがって、最大で懲役か、または罰金の刑を受けることになります。
もっとも、実際には、常習的に窃盗を行っている場合や被害額が高く悪質な場合を除いては、懲役刑が科されることはあまりありません。
なお、万引きに関しての警察・検察実務の運用では、初犯は警察段階の捜査で終了(微罪処分)、二度目は検察官の不起訴処分(起訴猶予)、三度目は罰金刑(略式請求)となることが多いです。
罰金刑でも窃盗の前科がつくことになるので、前科をつけたくないという方は、被害者と示談を締結する等の対策を立てる必要があります。
Q置いてあった他人の財布をもって帰りました。どのような罪になりますか?
ご相談者の行為は、いわゆる「置引き」というものにあたります。置引きは、窃盗罪か遺失物等横領罪に該当します。
窃盗罪は、上記のように刑法235条に規定があります。遺失物等横領罪は刑法254条で「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する」と定められています。
置引きでも、物が置かれてからそれほど時間が経っていない場合は、窃盗罪になりますし、物が置かれて物の所有者が離れてからある程度の時間が経過した場合には遺失物等横領罪になることが多いです。
Q窃盗をしてしまいました。逮捕されますか?
逮捕の可能性は、窃盗の種類や被害額によります。
たとえば、コンビニ等での少額の万引きであれば、逮捕される可能性は少ないです。店主に現行犯逮捕されて警察署に連れて行かれたとしても、身元保証があれば、当日中に釈放されることも少なくありません。
他方で、窃盗団や店舗荒らし等の組織的が認められる窃盗事件の場合は、逮捕状にもとづいて後日逮捕される可能性が高いです。その場合でも、弁護士を付けて対応することで、各種の不服申立てや保釈の請求等が認められ、予定よりも早く釈放されるケースがあります。
Q万引きで捕まりました。前科をつけない方法はありますか?
微罪処分か、不起訴で事件を終わらせることができれば、絶対に前科がつかないので安心です。
いわゆる「前科」とは、裁判で有罪判決を受けた過去を指します。したがって、裁判それ自体を回避することができれば、前科がつくことは100パーセントないと断言することができます。
裁判を回避する方法としては、警察段階で事件が終わる微罪処分か、検察官が起訴しないとの処分を下す不起訴処分の2通りが考えられます。
微罪処分は、事件に関する情報が検察官に送られる(検察官送致)前に、警察官の判断で捜査を終了することをいいます(刑訴法246条但書)。素行不良でなく被害額が少なくて被害回復がされている場合などに行われます。
また検察官に送致されたとしても、被害額が少なくて被害者と示談できている場合などには、検察官が起訴猶予という形で不起訴処分をすることが多くあります。
Q示談をしたいのですが、窃盗の示談金の相場はどのくらいですか?
窃盗の示談は、被害金額にプラスアルファの迷惑料を支払ってまとまることが多いです。確実に示談を成立させるために、あえて多めの迷惑料を支払うこともあります。
被害者としても、警察の捜査に付き合ったりと多大な迷惑を被っています。示談をする際は、被害弁償に加えて迷惑料を支払った方が、被害者の納得を得やすく、結果としてスムーズに事件が解決することが多いです。
Q窃盗で罰金刑になる場合は、いくらぐらい払えばいいのですか?
窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」と定められています。罰金を払う場合は、併合罪等で加重されない限り、「50万円以下」の罰金額で済みます。
「50万円程度の罰金では刑が軽すぎる」と判断された場合は、公判請求(正式起訴)され、刑事裁判で懲役刑が求刑されることになります。
Q万引き癖が治りません。この場合、罪は重くなりますか?
万引き癖が治らず、万引きを繰り返している場合、常習累犯窃盗という罪にあたることがありえます。常習累犯窃盗は、盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律2条に規定があります。
常習累犯窃盗とは、窃盗罪にあたる行為を常習的にする罪のことをいい、過去10年間に3回以上窃盗の罪で懲役刑を受けた者が、新たに窃盗を行うと成立し、3年以上の有期懲役に処せられます。
窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」ですので、最低でも3年以上の有期懲役となる常習累犯窃盗は、普通の窃盗罪と比べて、非常に重たく処罰されるものといえます。
Qクレプトマニアとは何ですか?
クレプトマニアとは、窃盗症のことをいい、物を盗むことをやめられないという精神障害のことを言います。
商品を買うだけのお金はあるけど盗むことをやめられない。特に使うわけでもないのに盗んでしまう。そういった場合には、クレプトマニアと診断されることがあります。専門病院に相談・通院することをおすすめしています。
Q執行猶予中に再び万引きをしてしまいました。助かる方法はありますか?
不起訴になるか、起訴されても判決で再度の執行猶予になれば、刑務所に入らずに済むので安心です。万引きの場合は、他の犯罪の場合と比べて、比較的再度の執行猶予になりやすいといえます。
再度の執行猶予とは、刑法25条2項で「前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が1年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも前項と同様とする」として、執行猶予中の犯罪であっても再び執行猶予が取れる場合をいいます。
被害者側と示談をして被害者から許してもらった場合などには、この再度の執行猶予になる可能性が高まります。